製造業における技能伝承に関する研究


三菱総合研究所所報 No.25(1994.3.31)

※原文(残部僅少ですが)入手希望の方がいらっしゃいましたら、お手数ですが、中村までご連絡ください。

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要約

熟練技能者の技能の伝承は、日本の製造業の存立に係わる大きな問題である。
近年技能伝承はより深刻な問題となりつつあり、このままでは、1)製品への直接的影響(品質低下、コスト上昇等)、2)現場の技能低下、3)将来の技術革新への対応の困難化、などのインパクトが生じてくると考えられる。一方で技能労働者の需要は、1)「技能の技術化」の限界、2)人間の能力の高さ、3)より高く機械の性能を発現することが可能、などの要因から今後も高まりを見せると予想される。今後の技能労働者の姿としては、1)スーパー技能者、2)ハイテク技能者、3)マルチ技能者、4)ノーマル技能者、の4つを想定でき、それぞれの特性に合わせた対策が必要となろう。
特に高度熟練技能者(スーパー技能者)は、その技能伝承の成否が会社さらには産業の存続さえ左右する場合もあり、企業の戦略要因として位置づける必要がある。しかしながら徒弟制度に頼るこれまでの伝承方法は限界に来ており、今後は技能を伝承される側ばかりでなく技能を伝承する側にも目を向けた対策や、技能伝承のための社会システムとしての「技能コミュニティ」の形成などが求められる。
さらに個々の対策の基盤として、技能を尊重する社会を形成していくことも必要となろう。


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