シンポジウムの開催にあたって
1980年代後半、エレクトロニクスに代表される急速な技術の進歩は、FA・CIMなどの生産システムを生み出し、「生産現場にはもはや人はいらない」と言う声まで聞かれた。さらに90年代に入ってからの円高の加速によって、生産拠点を海外に移転し、日本ではもはやモノづくりを行わず、ソフト経済へと移行することがさかんに提唱された。
しかし、21世紀まであと数年を残すのみとなったいま、「心の豊かさ、生活の質」を志向する世の中の流れは、「モノづくりにおける人間の役割」すなわち人間の「技能」に、再び価値を与えようとしている。
21世紀は、間違いなく高度技術の時代である。しかし高度技術の現場は、決して人間の技能を必要としないのではなく、人間の技能があるからこそ機能する場所である。
このような背景を踏まえて、本シンポジウムでは、高度技術社会における技能の姿、その持つ意味や果たす役割、さらには次世代への伝承の問題等について、三氏による講演と会場を交えた総合討論により、考えて行きたい。会場からも活発な参加をお願いする次第である。
次の3氏からの講演があり、その後総合討論を行いました。
中村肇へメールを送る: nhajime@a2.mbn.or.jp