原子力発電所や航空機のように、高度な技術システムが大規模に集積したものを「巨大システム」と呼びます。技術の進歩に伴って、巨大システムの信頼性は設備面では飛躍的に進歩してきました。その結果として、巨大システムに発生する事故・トラブルのうちの約3割が人間に起因する事故と言われています。
しかし「人間に起因する」とはいっても、誤操作(ヒューマンエラー)を起こしたその人が悪いのではないのです。人間と機械の間のすり合わせがうまく行っていないことによって生ずる、様々なエラー要因が重なりあって、初めて事故が発生するのです。つまり、我々が行うべきことは、エラーを犯した人を追求することではなく、エラーが起こったメカニズム・要因を解明し、二度と同じようなことがおきないように対策をとることなのです。
このような考え方の下で、私は「巨大システムのヒューマンファクター」の研究に取り組んでいます。主に電力会社やその関係会社からの委託研究ですので、ここではその成果の大部分を紹介することができないのが残念です。
研究を進めるにあたっては、特に、上のように人間を「マイナス側の存在」、すなわち「人間をエラーの原因として捉え、その対策を考える」という視点だけではなく、人間を「プラス側の存在」、すなわち「人間がいることによってこそ、巨大システムも最大のパフォーマンスを達成できる。システムが最大のパフォーマンスを達成するための人間の関わり方を考える」という視点に立っています。
このテーマについては、これまで、次のような発表等をしてきています。
表題 | 発表場所・掲載誌等 | 発表年 |
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[鼎談 基軸を探る]技術継承と人材力強化を考える(守島基博、中村肇、藤田玲子) | 躍 Vol.34 | 2018 |
安全の観点から捉えた技能伝承の問題について | 安全工学 Vol.56 No.2 | 2017 |
交通システムの安全を担う人材の育成 | JRガゼット 12月号(Vol.297) | 2011 |
ヒューマンエラーとは何か | 中小企業と組合 2月号(No.756) | 2008 |
プラントメンテナンスのアウトソーシングの現状とこれからの考え方 | プラントエンジニア 8月号 | 2005 |
実効ある防止策とは(インタビュー記事:ルール違反・形骸化のメカニズムの観点から解説) | 日経コンストラクション 2005年3月11日号 no.371 『特集 効かなかったミス防止策』 | 2005 |
プラントにおける効果的な指差呼称のあり方に関する検討(3)[連名] | 日本人間工学会第42回大会 | 2001 |
プラントにおける効果的な指差呼称のあり方に関する検討(2)[連名] | 日本人間工学会第41回大会 | 2000 |
プラントにおける効果的な指差呼称のあり方に関する検討(1)[連名] | 日本人間工学会第29回関東支部大会 | 1999 |
組織がおかす原因所在が曖昧なエラーについて[連名] | 日本人間工学会第39回大会 | 1998 |
ヒューマンエラーを原因とするトラブル事例分析への認知的視点(PDS)の導入に関する有効性の検討 | 日本プラント・ヒューマンファクター学会誌 Vol.2 No.2 | 1997 |
巨大システムとヒューマンファクター | 流通経済大学流通情報学科特別講義 | 1996 |
現場作業におけるチームマネジメントの要因について(1)(2) | 産業・組織心理学会第12回大会 | 1996 |
巨大システムの中の職人 | 資生堂デザインフォーラム「職人復権」〜高度技能獲得への道 | 1996 |
経営システムの社会システム化と人間工学−発電所保修作業、中小鉄道事故、製造業における技術伝承、の3事例からの考察 | 日本経営工学会平成5年度春季大会シンポジウム | 1993 |
『巨大システムのアキレス腱 ヒューマンエラー』 | 「全予測 先端科学技術」ダイヤモンド社 | 1991 |
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中村へメールを送る: nhajime@a2.mbn.or.jp